取引先の仕事が打ち切りになったこともあり、業績の悪化が予想されるため、やむを得ず契約期間が途中のパートを解雇したいのですが、問題が⽣じるのでしょうか。
正当な理由のない解雇の場合は解雇権の濫⽤にあたり、無効になります。
有期契約は期間中の雇⽤を保証することを前提とした契約であり、原則として期間中に契約を解除(解雇)することはできません。
解雇は、社会通念上適当であると判断される場合に限られるため、正当な理由のない解雇の場合は解雇権の濫⽤にあたり、無効になります。
ただ、⺠法628条や労働契約法17条には、「やむを得ない事由があれば、契約期間の途中であっても、有期労働契約の労働者の契約を解除することが可能」という内容の規定があります。
本ケースでは、「取引先の仕事が打ち切りになり、業績の悪化が予想される」ということが契約解除の事由となっていますので、これが使⽤者側の「やむを得ない事由」であると認められれば、契約期間が途中のパート社員を、使⽤者側から契約解除(解雇)することが可能になります。
「やむを得ない事由」があるかどうかは、事案によって、個別具体的に判断されることになります。本ケースでは、パート社員を解雇しなければ会社の経営に重⼤な⽀障をきたす可能性が⾼いという状況であることが必要になります。
ただし、この点の⽴証責任は、会社側が負うことになります。使⽤者側のやむを得ない事由が⽴証され、パート社員の有期契約を期間中に解除することになった場合、この契約の解除は労働基準法の「解雇」と判断されます。
したがって、使⽤者が有期契約の途中解除を⾏う際には、労働基準法20条の規定により、少なくとも30⽇(労働⽇ではなく休⽇も含めた暦⽇でカウントする)前の予告、予告をしない場合は30⽇分以上の平均賃⾦の⽀払いが必要になります。
このように企業経営上やむを得ない必要が⽣じた場合に、⼈員整理を⾏うのが整理解雇です。
整理解雇を⾏う場合、配転や労働時間削減など、労働者の解雇を回避するための努⼒を⾏い、客観性・合理性のある⼈選などの要件を満たし、労使間で⼗分に協議を⾏う、などの策をとった上で解雇を⾏う、というような企業側の誠意が求められます。
つまり、解雇対象がパート社員であっても、同様の策を講じた上で解雇に臨まなければなりません。
また、⺠法628条には「その事由が当事者の⼀⽅の過失によって⽣じたものであるときは、相⼿⽅に対して損害賠償の責任を負う」との⼀⽂がありますので、契約の解除を⾏う使⽤者は、残りの契約期間分の賃⾦と同程度の損害賠償⾦を負担しなければならない場合もあるということを知っておく必要があります。
労働者の事情で有期契約を途中解除する場合
⺠法628条の規定によると、使⽤者だけでなく労働者も、途中解除について損害賠償の責任を負うことになります。
ただ、労働基準法137条に、有期契約を締結した労働者(⼀部を除く)は⺠法628条の規定にかかわらず、労働契約の期間の初⽇から1年を経過した⽇以降はいつでも退職することができるとされています。
また、現実的には、労働者が出社しなくなった場合に無理に出勤を迫ることもできない、または労働者に損害賠償をするだけの資⼒がない、といった事情があることから、労働者からの有期契約の途中解除は⽐較的⾃由に⾏われる傾向にあるようです。