今、保育の問題点として噴出しているのが、組織が明確にされていないことです。保育園の組織図が複雑化され、すべての保育園の職員から保護者にいたるまで、しっかりと下りて把握がいきわたっていないことが問題です。
園によっては、園長がいて、副園長がいて、主任がいて、サブの主任がいてと、各担当者が多過ぎて、その役割がきちんと明確化されていないところもあります。
そうした組織では、連携をとりにくく、何か一つ問題が起きるとグラグラと揺れてしまうのです。
この保育園内の混乱は、保育士たちを疲弊させてしまいます。ストレスでいっぱいになり、子どもとのふれあいではなく、職場の人間模様に疲れていってしまうのです。それは、子どもたちの成長に生かされることは何一つありません。
こうした組織の複雑化は、それだけ保育に求めることが多様化していることが背景にあるため、簡単に「こうすれば」と今日明日に解消することのできない問題ではあります。
けれども、保育園内でそれぞれの役割がなんなのかを明確にし、それを全員で共有することです。
自分たちがどんな保育をしたいか、どんなふうに子どもに育ってほしいのか、保育の理念の重要性を一人ひとりが感じることです。
そうした一歩一歩の「できることからはじめよう」の精神で改善していけば、保育現場の質も上がっていくはずです。
保育環境を決めるのは、人数や職員の配置といった「人的環境」と、園庭の有無やスペースの広さといった「物的環境」に分けられます。
この両輪がうまく回ることで、園運営は成り立っています。
物的環境の不足は、保育士などの工夫や知恵で補うこともできますが、人的環境については、人が不足してしまえば立ち行かなくなってしまいます。
働く環境が悪ければ、どんなに子どもたちがかわいくても、限界を感じて、心も身体も疲れきって、辞職してしまいます。
するとさらに保育士不足が加速し、働く環境も悪化して、どんどん離職率が上がっていくという、悪循環に陥っていきます。
ちょっと極端な言い方ですが、園数が増えるほど保育の質が低下しているのが、今の日本の現状なのかもしれません。
「保育所保育指針」には、幼稚園の教育要領にのっとって、保育にも教育面を盛り込もうという内容も含まれています。
この指針をきちんと現場の実践に生かしていけるかどうか、個々の保育園が問われていきます。
指針の文言だけを理解しても、それをそのまま現場で役立てることはできません。
一人ひとりの保育士たちが、その指針を実際の現場で、その都度その都度考えて実践するしかありませ。
保育園が不足していると言われているなかで、経営上の問題から閉鎖に追い込まれてしまう園もたくさんあります。
そうなると、最も困るのが子どもたちです。保育園という受け皿がなくなれば、保護者の仕事も立ち行かなくなり、その真ん中に立たされた子どもに、今度は両親のストレスがかかっていきます。そんな悲しい状況を招いてしまいます。
追いつめられる家庭のなかで、子どもたちは何を信じればいいのか、その成長に大きな影を落とすことにもなりかねません。
保育士にとって働きやすい環境を整えるということは、子どもたちやその親たちにとっても、いい保育環境を提供することになります。何よりも子どもたちの健やかな成長のために、保育環境の改善が今こそ求められています。