職業としての保育のゴール
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保育とは、0歳から6歳(小学校入学前)までの子どもたちを見守りながら、その成長に日々関わっていく仕事です。

単純な説明としてはこの通りなのですが、改めて「保育ってなんだろうか?」と問われると、さまざまな回答があるでしょう。特に、保育の世界が揺れ動く昨今では、いろいろな意見が飛び交っています。

「保育所保育指針」には、「子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所における環境を通して、養護及び教育を一体的に行うこと」が掲げられています。

これは保育において、とても大切なことです。

子どもたち一人ひとりは、生まれ落ちた境遇、物理的環境、人的環境が違います。そこに保育士として関わらせてもらうことで、その育ちが大きく変わっていくのです。

0歳~6歳という保育士が関わる子どもの6年間は、一人の人間として生きていくうえでの「土台」が育まれる時期です。

0歳児は、ほとんどすべてのことを大人に助けてもらっていて、べったりと密着しているような時期です。それが、やがて自分で目の前にあるものをさわって、世界を確認しようとしはじめます。

1歳になると、自我が芽生え、「自分で!」と自己主張がはじまります。一人で動き回るようになりますが、まだまだ大人に見てもらっているという安心感が必要で、少し離れると「大丈夫?」というように、振り返って大人がちゃんといることを確認します。

2歳になると二~三人の友達と関わって遊ぶようになり、3歳になると「親や保育園の先生より、友達の方が大事」といった気持ちを持ちはじめます。

4歳児は「仲間」という感覚を抱くようになり、自分たちで仲間内でのルールをつくりはじめます。

そして、5歳、6歳という保育の集大成を迎えるのです。

成長するにつれ、「自分でやりたい、やってみたい」という気持ちがどんどん大きくなっていきます。けれども、思ったようにできなくて、泣いたり、怒ったり、ひっくり返ったりすることもあります。

そこに保育士は、そっと手を差し伸べます。

たとえば、何かをつかもうとしたとき、ほとんど大人が持ってあげていても、自分で持っているような感覚、自分で何かを投げるような感覚を味わえるようにしてあげます。

そこで、どんなに大人がフォローしていたとしても、
「自分でできたね」、
「最後までできたね」
と声をかけることが、子どもたちの成長の大きな助けになります。

子どもがやりたいようにやらせてあげることが、自己肯定感を育むことにつながるのです。

「魔の2歳児」、「悪魔の3歳児」なんて言葉もありますが、
こうした
「これはイヤ!」、
「こうしたい!」、
「自分でやりたい!」
という想いに寄り添ってあげて、「自分」という下地がちゃんとできたときに、暴れる3歳児ではなく、はじける3歳児のステージに立つことができるのです。

大人にたくさん助けてもらいながら、「自分でやった」という自信をつけはじめると、少しずつ「大人よりも友達が大好き」という気持ちが芽生えてきます。

最初はお友達とうまく意思疎通ができなかったり、自分を押しつけてしまったりと、なかなかコミュニケーションがうまくとれません。

その段階をもがき葛藤しながら成長し、
3歳児のステージではじけることができると、
次の4歳児、5歳児の世界は、仲間のなかでもお互いが育ち合い、人との豊かな関係が持てるようになってくるのです。

「保育」の理想として、「子どもにこうなってほしい」というのはたった一つです。

それは、
「ぼくは誰よりもぼくが好き」
「私は誰よりも私が好き」
と思うようになってくれることです。

それは、自分のことを他ならぬ自分自身が認めるという、自己肯定です。

この「好き」というのは、
いい子だから、賢いからというわけではなくて、
ケンカもするし、イタズラもするし、パパやママを困らせる自分だけれど、丸ごとがぼくなんだ、私なんだと言える子どもになってほしいということです。

誰かに好きと言われなくても、「自分が好き」と言える子どもは、他人のことも好きになることができます。自分と同じように、相手のことも丸ごと受け入れることができるようになるのです。

反対に、「どうせぼくなんて」と疎外感を抱いてしまっている子どもは、「自分なんてどうせいなくてもいいんでしょ」
という心持ちから、なかなか離れられなくなってしまいます。

「友達がほしい」という感情まで育っていないことも多く見られます。

すべての子どもたちに、
「今の、丸ごとの自分でいいんだ!」、
「ぼくはぼくで、私は私でいいんだ!」
という自己肯定感を持った子どもに育ってもらうのが、職業としての保育のゴールです。

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