保育のことが見えてくるまでは時間がかかる
保育士を夢みて、その夢を叶えたものの、いざ現場に入ると、そのたいへんさについていけず……
という話はよく耳にします。
保育の現場でよく使う言葉の一つに、「3日、3月、3年、30年」というのがあります。
まずは3日頑張ったら、次は3ヶ月、その次は3年というように、一つずつの節目を目標に学び、乗り越えていきます。
保育士として3年経ち、4年目に入ったときに、
「ようやく保育のことが見えてきた」
「面白くなってきた」
という保育士もいます。
保育士ってたいへんだからと辞めるのではなく、継続は力なりで、踏ん張ることで人として成長させてもらえるはずです。
どれだけ成長したかは、自分ではなかなかわからないかもしれませんが、やがて周りの人たちがそれを教えてくれるときがきます。
たとえば、
「先生、辞めないで」
「ずっと保育園にいてください」
などと言われて初めて、自分が何をやってきたのかを知ることもあります。
大切なのは、学び続けることです。子どもたちからもいろいろなことを学んで、吸収し続けることです。
保育士の幸せな瞬間
0歳~6歳という人としての土台づくりに関わることで、自分自身もともに成長していく、そんな喜びがとても大きい仕事です。
保育士をしていて幸せを感じるのは、赤ちゃんが初めて言葉を発した、立った、歩いたなど、人としての成長を目の当たりにできることです。
ハイハイができるようになる過程では、グッと自分の身体を引き寄せる感覚をつかむと、あとはあっという間にできるようになります。
人としての節目、節目をどれほど見せてもらえるか、まさにドラマのような世界です。
こういうシーンに立ち会えることは、この仕事だけの幸せな瞬間です。その子の人生のはじまりを肌で感じることができます。
保育は「人間学」
保育は「人間学」です。子どもと保育士が互いに成長し合うなかで、保育士は仕事をしていくのかもしれません。子どもがいてくれる限り、この仕事は変わることなく、いつまでもあり続けるものでしょう。
もちろんラクな仕事ではありませんから、もがき、苦しむ局面にも何度もぶつかります。けれど、そんなときこそ、目標を失わず、「子どもが好き」という気持ちを持ち続け、保育の原点へと立ち返ってもらいたいです。
大きな夢は遠くにすえながら、まずは目の前の小さなハードルを一つずつ飛び越えていくのです。これがクリアできたら、もうちょっと高く、遠くというように、自分の可能性を広げていけるのが保育の世界です。
保育士の仕事をあえて選んだことを、ブレずに中心にすえておく
保育士をめざされている方のなかには、これから実際に保育士になって、先輩保育士や園長にいろいろな指導を受け、ときには悩んでしまう人もいるでしょう。
それでも、主体性は失わないでほしいです。いつでも自分の頭で考えて、相手に伝えていくことをしていけば、たとえ時間はかかってもちゃんとわかり合えるはずです。
子どもが好きで、子どもといられる仕事をあえて選んだことを、ブレずに中心にすえてほしいです。
「保育士を生涯の仕事にする!」と宣言して、仕事を始めて、自分が思うような保育ができずに揺らぎそうになったときには、「生涯の仕事にするって自分で言ったんだよね……」と自分の心に問いかけながら、自分で定めた道を進みましょう。
悩みがあるときは仕分ける
保育士になれば、多くの悩みを抱えることもあるはずです。そんなときは、その悩みをまずは全部書き出して、「今やるべきこと」、「あとでもいいこと」などに仕分けていきます。
すると、今すぐやらなくてはいけないことが、ハッキリしてきます。
自分の言葉の引き出しを開けて、自分の考えを語る力を身につけることは、保育の現場でも大いに生かすことができます。
できることから、はじめよう
これからは、保育園だ、幼稚園だと縦割りの組織編成で考えている場合ではありません。
それよりも、「子どもは国の宝だ」と言うなら、幼児教育の段階から、子どもたち誰もが平等に学ぶ権利を得られるようにするべきです。子どもたちの育成について国をあげて取り組み、乳幼児保育・教育を無償で保障していくぐらいの大きな変革が必要です。
そういった意味で、幼稚園と保育園が一体化した「認定こども園」に保育が一本化されていくことは、大きな変革の一歩となるかもしれません。
けれども、それを実現するには、この先長い年月がかかることでしょう。
社会や制度が変革のときにあると言っても、目の前の子どもたちには関係がありません。子どもは0歳~6歳の今しか、保育を受けないのです。
たとえ10年後に良くなったとしても、それまでの間に保育園に来ていた子どもたちには無関係です。
ですから、目まぐるしく変わる保育や社会の動きに対応しながらも、自分の核になるものはブレずに、常に中心にすえておきながら学び続けることで、保育士として豊かな人になってほしいです。
少しずつの努力が、目の前にいる子どもたちの成長の支えになるはずです。「できることから、はじめよう!」の精神を持ちましょう。