保育園にとっての園長という立場は大切です。
いつでも子どもたちと接していられるわけではありませんが、保育の軸となり、要となり、子どもにとって「保育園」が安心できる場所になるかどうかを左右する、とても重要な役割を担っています。
良い園には必ず良い園長がいますし、その逆もまたあります。
園全体を考えなければならない園長。
日々子どもたちとじかに接し、現場での問題点を肌で感じる保育士たち。
そこには当然意見の合わないこともありますし、ときには対立することもあります。
保育園には保育士だけではなく、調理師や用務職員、看護師、栄養士などがいますし、保護者の方々ともコミュニケーションを取らなければなりません。
そんななかで大人同士が感情論だけで言い争ってしまっていては、保育にとって最も肝心なことが忘れ去られていってしまいます。
園内での話し合いが意見の交換ではなく、対立になってしまうようなとき、大切なのは、「今、子どもをどこに置いて考えていますか?話していますか?」ということです。
保育はいつでも子どもと向き合っていく仕事です。もちろん、子どもと接しているときだけが保育なわけではありませんが、大人が理屈だけでバチバチと闘わせていては、大事な視点が抜け落ちていってしまいます。
「あなたはなんのために保育士をしているのでしょうか?」
・それは、職場の人間関係に悩まないためですか……
・それは、保護者の方に嫌われないようにするためですか……
・それは、自分の意見を押し通すためですか……
保育士として大切なのは、この「目の前の子どもを真ん中にすえた保育」、「子どもを真ん中に置いた話し合い」です。
保育の世界では、話し合いの際に「子どものためになるんだ」、「子どもにとって良いことなんだ」という言葉はよく出てきます。
この言葉、いかにも子どものことを第一に考えているようですが、本当にそうなのでしょうか。
そんな「子どものため」という言葉さえも、場合によっては、子どもを上から眺めたような、おこがましい態度につながっていきかねません。
誰かが意見を言ったときに、
「それって、子どもにとってどうなの!?」
「そんなことしたら、子どものためにならない!」
「○○クラスのチームワークが悪くて、子どものためになってないんだけど、どういうこと!?」
と、そんなふうにピシャリと言われてしまえば、言われた相手はどうしても厳しい言葉を受けたと構えてしまいます。
言い方、伝え方も、とても大切です。
そんなときは、
「私はこういうとき、こう思うけれど、あなたはどう思いますか?」
という言い方を選ぶようにしましょう。
本当に子どものことを考えていつも行動している人は、あえて子どものためにとは言わないです。
「子どものため」という言葉は、それ自体は悪くなくても、保育現場においてはマヒして使われてしまっている「用語」のようなものの一つかもしれません。
「子どものため」という正義を振りかざして、子どもの視点から外れた意見のぶつけ合いをするのではなく、真に「子どもを真ん中に置いて」みんなが考え、意見を交換した方が、よっぽど良い保育につながります。
・子どもを上から見るでも下から見るでもなく、同じ目線に立ってみる。
・子どもに起こった具体的な場面を取り上げて相談していく。
・そのうえで、お互いに心を開いて知恵を絞り、意見を出し合っていく。
そんな方向の保育をめざしましょう。