あまりにもミスが多く、モチベーションも感じられないパート従業員がいるのですが、契約期間中に賃⾦を下げることは認められないのでしょうか。
減給はあくまで最終⼿段ですが、実際に⾏う場合は就業規則への明⽰が必要です。
労働者の勤怠や勤務態度などに問題がある場合に経営者側が取る⼿段として減給という⽅法がありますが、減給は不利益変更に値するため、経営者側が⼀⽅的に⾏うことはできません。
原則として労使双⽅が合意して初めて、変更が可能になります(労働契約法8条)。
⽅法としては、まずそのパート従業員が⾏っている業務内容のレベルが他のもっと賃⾦の低いスタッフと同程度と判断できる場合には、他のスタッフと同額の賃⾦にすることを伝え、本⼈の同意を得る場合があります。
この場合の減給を認めてもらうためには、就業規則にその旨を明⽰した上で、遅刻などによる業務への影響や他の労働者との数値化して⽰すなどして、合理的な理由があることを理解してもらうことが必要です。
また、懲戒処分として減給を⾏う場合は、まずは軽い懲戒処分から始めるという⼿段をとります。
減給に⾄るまでの懲戒処分には、①戒告、②けん責があります。まずは戒告として⼝頭または⽂書により厳重注意を⾏い、それでも改善が⾒られない場合はけん責として始末書を取ります。それでも改まらない場合に減給を⾏います。
あくまでも「減給は最終⼿段」というスタンスをとることが⼤切です。
懲戒処分として戒告・けん責・減給を⾏う場合は、その根拠として就業規則上に定めることが必要です。この場合の注意点として、懲戒の段階ごとに対象となる⾏為を限定しないことです。
たとえば、「故意または過失により、会社に損害を与えた場合は戒告に処する」というように処分を限定した場合、会社に損害を与え続けた場合でも戒告以上の処分ができなくなります。
必ず、「戒告・けん責・減給に処する」というように、可能性のある懲戒処分すべてを網羅する表現にします。その上で「処分を繰り返す場合は、その懲戒を加重する」と加え、懲戒の段階を引き上げ、最終的には減給の可能性もある、と⽰唆します。
実際に⾏う減給額には、労働基準法91条で「1回の額が平均賃⾦の1⽇分の半額を超え、総額が1賃⾦⽀払期における賃⾦の総額の10分の1を超えてはならない」という制限があります。
ただし、減給はあくまでも最終⼿段です。減給対象のパート従業員の仕事ぶりが改善した場合には、賃⾦を据え置くつもりであれば、まず本⼈に注意・改善指導を⾏い、様⼦を⾒る配慮も必要です。
また、⽣じるミスがその部署ゆえのものであれば、配置転換により改善される場合もあります。