自分でできることを、大人にやってほしいと言うこと以外にも、家庭や保育園で、子どもはいろんなことを大人に要求します。「だっこ~」というのもその一つです。
家事で手が離せない時や、保育園でのあわただしい時間帯に、子どもが「だっこして」とせがんできたら、どのように感じるでしょうか。
いま抱っこしたら降ろせなくなるからと、「ちょっと待っててね」とはぐらかしてしまったり、
「ごめんね、いま手が離せないの」などと、
ごまかしてしまったことはありませんか?
歩けるようになった1歳や2歳の小さな子どもが、自ら「だっこしてほしい」という思いを示し、しぐさや言葉で伝えてきた時も、心の土台を育むチャンスなのです。
作業の手を止めてでも、その時に応えてあげるべきです。
あとになって、時間に余裕ができたからと、たっぷり抱っこしてあげても、「だっこしてほしいと伝えたのに、だっこしてもらえなかった」というきもちは取り返せないのです。
抱っこしてほしいというきもちに、できるだけ早く応えてあげるようにしましょう。
このような抱っこのケースでも、保育を時間通りに大人主導で「回そう」と考えている保育園だと、「今から給食の準備でテーブルを動かさなきゃいけないのに」などと、作業を優先してしまいがちです。
また、一度その子を抱っこしたら、それを近くで見ていた他の子も「わたしもー」といわんばかりに、次々と子どもたちが集まり、「だっこの順番待ち状態」がよく起こります。
その時に、他の先生が加わり、抱っこする保育者の人数分担をしようとしても、あまり意味がありません。なぜなら、子どもは「わたしもその先生にだっこしてもらいたい」というきもちになっているからです。
このような場面が想定されるため、保育園という集団生活の中では、この「だっこしてほしい」という子どもの要求に、一つひとつていねいに応えることを躊躇する保育者や保育園も多いようです。
ただ、作業は後でもできますし、何人もの子どもを順番に抱っこして、長い時間を要することになったとしても、それなら別の仕事は他の保育者がサポートすれば良いだけで、大きな問題ではないはずです。
それ以上に、その時その時の子どものきもちによりそうことの方が、どんな仕事よりも優先されるべきなのです。