保護者の方にとって、理想の保育園とはどんなところでしょうか。
こう聞かれると、多くの方は「安心してわが子を預けられる場所」と答えるでしょう。保育者自身も、「自分の子どもを預けたいと思える保育園か?」という視点から保育を見直し、「良い」保育園であるために日々改善に努めるべきです。
それでも、100点満点と明確にいえる保育園の「完成」や、「完全」なゴールにはたどり着けないです。なぜなら、保育者が日々接する小さな子どもたちは、1日として同じ日を過ごしているわけではないからです。
小さな子どもたちは個人差が大きいものです。しかし、一人の子だけを見つめ続けてみても、生活も発達も連続しているため、日に日に変わる興味や関心、時間帯による機嫌の移り変わりなどによって、その都度「良いこと」は変わっていきます。
それが、保育園という集団生活になると、子ども同士の関係性や、保育者といった環境との間で、子どもの成長機会も無数に広がり続けるわけです。そんな中で、保育園はなにをよりどころに、「良い保育園」を目指すべきなのでしょうか。
国がガイドラインとして出している「保育所保育指針」(厚生労働省)が参考になります。
認可を受けた保育園では、毎年、行政の担当者が保育園に立ち入り、運営や保育の中身に問題がないかを調べる、指導監査というものを受けます。
保育所保育指針では、保育園の運営にあたり、基準として満たすべき確認事項が多く盛り込まれています。
この保育園運営のバイブルともいえる保育所保育指針の1章では、保育所の役割として、いちばんはじめの文章に「入所する子どもの最善の利益を考慮」という言葉が書かれています。
「保育園はなんのための施設か」と聞かれたら、「働く親が子どもを預けるための施設」と答える大人はたくさんいます。確かにその通りではあるのですが、国が示す保育園の最も大切な役割は、あくまでも「子どもの最善の利益」なのです。
つまり、理想の保育園をシンプルに定義づけるなら、「子どもの最善の利益を保障できる保育園」ということになります。
そして、ここでいう子どもとは、一人ひとり、「それぞれの子どもにとって」という意味なのです。
では、人間としての心の土台ができあがる、「0・1・2歳児にとっての最善の利益」が保障された保育園とは、どのようなものを指すのでしょうか。
子どもを主体にして整理してみましょう。
○泣いて知らせたら、無条件で自分の希望に応えてくれる存在がすぐそばにいる
○「やりたい!」と思ったことを、やらせてもらえる
○周りの子と比べるのではなく、自分をまっすぐに見て肯定してくれる
○無理強いされることも、禁止や否定をされることもない
○自分のペースに周りが合わせてくれる
こうして考えると、家庭での育児の場面でも、すべての時間を子どもに合わせられないのに、保育園という集団生活で実現するというのがいかに簡単でないかが分かるでしょう。
「それなら、3歳までは家庭で育てた方が良いの?」と思われるかもしれません。
ですが、保育園での生活には、家庭ではできないような社会との触れ合いや、お友だちとの日常的な関わり、さまざまなあそびや体験・経験など、たくさんの機会があります。
そのため、「家庭的な保育を」「一人ひとりにていねいに」「集団生活の場で行える」というのが、小さな子どもにとっての望ましい保育園のあり方といえるでしょう。
そして、最もお伝えしたいのは、「小さな保育園」には、こうした0・1・2歳児の最善の利益につながるような保育を実現しやすい利点が多くあるということなのです。