鍵でガチャガチャとあそんでいる子どもの行動をどう受け止める?
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保育園内に入ると、スペースを区画するゲートがあるのをよく目にします。

小さな保育園でも、乳児がハイハイするスペース(ほふく室)と保育室、玄関と保育室などの区画を、大人の腰くらいの高さのゲートで仕切っています。

子どもが自由に開けて出入りしては危険なので、ゲートには鍵がつけられていますが、腰くらいの高さのゲートだと、その鍵は小さな子どもの手でも届く位置にあります。

子どもは、普段から保育者がこの鍵を開けて出入りしているのをよく見ているため、「ぼくも開けたい」「あっちの部屋に行くにはあれを触ればいいんだ」と、ガチャガチャと鍵を触ろうとする子がいます。

同じような環境になっている保育園では、どこでもよく見られる光景です。そうした時、「危ないからダメ!」「それは触らないで!」などと子どもに強く言い聞かせれば、今後はやらなくなるかもしれません。

ですが、1歳や2歳の子どもたちが、なぜ触ってはだめなのか、なぜやろうとしていることを止められるのか、その意味までは理解できないのです。

保育者が子どもに対して、禁止する言葉や、強い口調で「やらないようにさせる」行為は、子どもの「やりたい」という意欲や興味、好奇心をそいでしまうだけでなく、「やらせてもらえないんだ」という無力さや、否定的なきもちだけが心の中に残ってしまいます。

とはいえ、安全のために区画しているゲートなので、自由に子どもが開け閉めするのを放っておいては、鍵の意味がなくなってしまいます。

こういう時も、「子どもにとってどうだろう?」という視点から考えます。

小さな子どもたちは、いろんなことに関心が広がりはじめ、自らの意思でいろんなものにきもちが向かっていく発達段階にあります。興味があるものには、まずはなんでもやってみようとします。

家庭でも、ちょっとした穴を見つけては指を突っ込もうとしたり、引き出しを全部開けようとしたり、ティッシュペーパーを何枚も引っこ抜いたり……

「ダメ!それはやらないで!」と、つい言いたくなる場面がたくさんありますよね。

そんな時、まずは子どものそのきもちによりそうことから関わりをスタートします。

「そうだよね、触りたくなるよね」という共感を示す言葉や、「○○ちゃん、こんな高さまで手が届くようになったんだね~」と肯定的な態度で声をかけます。

そして、「これは危ないからさわらないでおこうね」と、やさしく伝えればいいのです。まだ言葉の意味や理由までは理解できなくても、漠然と「これは触らない方がいいのかな」ということは、少しずつ分かっていくものです。

また、言葉ではなく「感情」は子どもにもしっかり伝わります。

なんとか止めようと思い、大きな声で力強く「ダメ!」と言ってしまっては、子どもは叱られたという感情よりも、「怒られた」という感情の方が芽生えてしまうのではないでしょうか。

そういった体験が繰り返されると、自主的にいろんなことをやってみようという主体性や意欲が失われ、大人の顔色ばかりを見る子に育ってしまいます。

だからこそ、保育でも育児でも、まだ小さな子どもたちには「叱る」「怒る」「言って聞かせる」ではなくて、ていねいに「伝える」という接し方や、声のかけ方を意識するのが大切なのです。

また、危険は子ども側ではなく、環境側にもあります。

子どもが鍵を触るのは「当たり前」で、そもそも触っても大丈夫なように環境を改善していくことも大切です。「これだと、やっぱり簡単に開けられちゃうよね」「こっち側に取り付けたらどうかな?」「こういうタイプの鍵の方が危なくないんじゃない?」などと、検討していきます。

たとえば、保育園にあるゲートに、鍵を2つ、3つと追加でつけたりします。それでもかしこく開けてしまう子もいるのですが、一年中鍵を開けてあそぶわけではありません。そのため、「伝える保育」をていねいに重ねていくことが大切なのです。

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