小規模保育園の利点-集団規模が小さい
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保育所保育指針には、保育園で行われる保育の目標の一つとして、次のように定められています。

十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。(保育所保育指針より)

子どもにとって保育園とは、1日の長い時間を過ごす生活の場です。文字通り「くつろいだ雰囲気」が情緒の安定には大事ですし、環境として保たれるべきですが、それには一緒に過ごす集団の人数もおおいに関係していきます。

たとえば、大人でも20人の会議に出席すれば、緊張感も生まれ、なかなか発言がしづらいですよね。それが、3・4人程度での会議となると、きもちもずいぶんと変わっていくはずです。

小さな子どもも同じように、大人数の集団の中ではなかなか自己を発揮しづらく、保育者側も園児が大人数だと、集団を動かすような保育に傾いてしまいます。つまり、一人ひとりに応答的で、個別的な関わりをするのがむずかしくなるのです。

「一斉保育」や「保育を回す」という言葉もありますが、園児のグループサイズが大きいと、保育者側も、どうしても子どもを全体で動かすような時間の流れになってしまいます。

ほかにも、園児が早く動くよう急かしたり、集団からはみ出る子が出ないような声かけが必要になってきます。

そうなると、保育者も余裕がなくなり、柔軟な対応を取るのがむずかしかったり、あわただしさが表情にも出てしまったりして、園全体の「雰囲気」もどこか落ち着かないものになります。

そうではなく、小さな子どもがくつろげる環境を言葉で表すと、「ゆったり」「ほんわか」「まったり」など、穏やかで和やかな雰囲気に包まれたような場所です。園児のグループサイズが小さければ、こうした雰囲気も実現しやすくなるのです。

大きな保育園でも、活動のグループ単位を小さく分けたり、部屋をいくつかに仕切ったりといった工夫をしている保育園もあります。

一方、小さな保育園では、そもそも園全体としての園児の人数が少ないのが基本になります。そのような少人数の集団の中で、一人ひとりが、思い思いに、自由にあそべる環境であれば、保育者も余裕をもって、子どもの主体性やきもちにていねいに関わってあげることができます。

集団を動かす必要もないため、そっとそばで見守るような状態でいられるのです。

集団規模が小さい利点については、実際に園児定員と、保育者の人数を見れば分かりやすいです。

保育に必要な保育者(保育士資格をもつ有資格者)の、法律上での配置基準は、
0歳児3人につき保育者1人、
1・2歳児は6人につき1人とされています。
たとえば0歳が12人いる場合、配置基準上は保育者が4人いれば良いことになります。

しかし、同じ空間で12人の0歳児がいたら、「私はこの3人を担当する」と決めたところで、保育者4人のどの目にも12人の0歳児がそこにいるものとして映ります。

そして、だれか一人が泣き出せば、他の子もつられて泣き出したり、不安な感情が広がってしまいます。

想像しただけでも大変な状況です。

小規模保育園の場合、0歳児の定員数が少ない保育園では2人、一番多いところでも4人の設定にしているところがあります。さらに、独自の配置基準として、1人の保育者が配置上でになう0歳児は2人までにしているところもあります。

つまり、乳児室にいるのは「0歳児2・3人と保育者1・2人」または、「0歳児4人と保育者2人」という状態です。

大人数の園児を大人数の保育者で見る状況と比べれば、いかにくつろいだ雰囲気が保てるかが分かるはずです。

また、1歳をすぎると少しずつ自分の足で歩けるようになります。その中には、活発に活動する子もいれば、慎重でゆっくりペースな子もいます。大人数の園児との関わりでは、保育者はどうしても安全面に気が抜けず、活発な子に気が向きやすいところも出てきます。

一方、人数が少ない小さな保育園だと、一人ひとりに目が行き届くため、おとなしい子でも同じように、常に保育者が気を向けている状態が保てます。小さな子どもが放っておかれることなどは起こらないのです。

子どものあそびについても、集団で一斉に動く、というルールがなければ、「子どもがこれであそびたい」という興味や関心をていねいに尊重しやすくなります。

人数が少ない保育園だと、さまざまな面から「子ども主体」の場面が広がりやすくなるのです。

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