ライフスタイルから働きかたを変えよう
「派遣社員の人たちは、みんなが正社員になりたいと望んでいるはず」こんな決めつけかたをしているさまざまなテレビ番組や新聞・雑誌の記事を目にしますが、本当にそうでしょうか。
派遣社員の中にも、派遣で働いて実績をつくり、次のステップとして正社員を希望する人はもちろんいます。しかし一方で、ずっと派遣で働き続けたいと言う人もいます。
どちらを選ぶのかは、その人が仕事を含めたライフスタイルをどう設計していきたいかによります。
2015年7月24日、総務省統計局から、興味深い広報資料が発表されました。タイトルは「最近の正規・非正規雇用の特徴」。これによると、日本では1990年以降、非正規雇用者数の増加が、雇用状況における特徴的な動きになっているといいます。
1980年に881万人だった非正規雇用者数は、2014年に1962万人となんと2000万人近くまで達し、実に2倍以上になりました。
雇用者全体のうち、非正規雇用者が占める割合を見ると、2014年には37.4%とほぼ4割です。
正規雇用がいいのか、非正規雇用がいいのかというのは、判断基準がさまざまにあり、意見が分かれるところです。しかしいずれにしても、派遣社員を含む非正規雇用者は急加速で増加していて、もはやどちらがいい・悪いという議論にほとんど意味がなくなってきています。
世の中ではよく「正社員」という言葉が使われますが、実は正社員という法律的な定義はありません。無期雇用契約によって雇われ、雇い主が「正規の職員・従業員」と認めている人たち全部を、一般的に「正社員」と呼んでいるだけです。この人たちが、いわゆる正規雇用者です。
一方で、それ以外のパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託と呼ばれる人たちが、非正規雇用者というわけです。
実は、望んで非正規雇用の働きかたを選んでいる人が多い
総務省統計局の「最近の正規・非正規雇用の特徴」(総務省統計局2015年7月24日発表)でさらに興味深いのは、「非正規雇用者が非正規の職に就いた理由」についてです。
2014年の調査結果では、非正規雇用者のうち「不本意型」、つまり「正規の職員・従業員の仕事がないから」しかたなく非正規の職についていると答えた人は18.1%と2割を切っています。
非正規雇用者の8割以上が、「自分の都合のいい時間に働きたいから」、「家計の補助・学費等を得たいから」、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」、「専門的な技能を活かせるから」などのポジティブな理由があって、非正規雇用という働きかたを選んでいます。
みんながフルタイムで週5日働きたいわけではありません。みんなが会社本位、仕事最優先で働きたいわけでもありません。
こうした人たちの望みをかなえるには、待遇や給与、キャリアアップ支援制度の充実などを考え合わせても、派遣社員という働きかたが最適なのではないでしょうか。
日本では、もうすでに「正社員=多数派、非正規雇用=少数派」とは言い切れない時代に入ってきているのが現状です。どういう働きかたが一番いいのかを決めるのは、ほかでもない、働くあなた自身です。
そして統計では「非正規雇用」と分類されていますが、派遣社員という働きかたは、働く人にとって、もっとも便利で有利で安定した働きかたです。そもそも派遣社員という働きかたを、非正規雇用という分類に含めてしまってよいのかという疑問すら感じます。
正社員や派遣社員という言葉だけで勝手なイメージを抱き、自分には合わない会社や仕事に無理やり自分を合わせて、ストレスを溜め込んでいく時代はもう終わりました。
働く人みんなが、自分の人生に何を求めるか、その中で仕事はどうあるべきかを考え、仕事を選んでいくのがこれからの時代です。派遣の仕事を、あなた自身の課題を解決するすばらしい選択肢の一つとして見てほしいです。
POINT
・正社員がいいとは一概に言えない時代になった。
・実は自ら望んで非正規雇用で働いている人が多い。
・自分の人生に何を求めるかで、働きかたを選ぶ時代である。