正社員に認められることのほとんどが、派遣社員にも認められる

派遣社員にも社会保険は適用される

「派遣の立場は弱い」という思い込みの根本的な原因は、正社員に適用される社会保険や福利厚生などが、派遣社員には適用されないと誤解している人が多いからではないでしょうか。

そんなことはありません。正社員も派遣社員も、法律的には労働者であることに変わりありません。

ですから、正社員に各種の労働法規が適用されるように、派遣社員にもまた適用されます。つまり法律で定められて正社員に認められていることのほとんどが、派遣社員にもちゃんと認められています。

たとえば、働く人にとってもっとも気になるのが、社会保険が完備されているかどうかです。

社会保険とは一般的に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つを指します。派遣社員にも社会保険はしっかり適用されますし、また派遣会社も適用させる義務があります。それは正社員と同様です。

ただし、期間の定めのない「無期雇用」の正社員と異なり、派遣社員の場合は期間の定めのある「有期雇用」であるため、社会保険の適用については、雇用期間等についての条件を満たさなければならないなどの要件があります。それについて触れておきましょう。

社会保険適用の条件

フルタイムで働く方等(※1)だけでなく、一定の条件(※2)を満たすパートやアルバイトの方も社会保険の加入対象となります。従業員数101人以上の企業で働いているパートやアルバイトの方にも加入対象になります。

※1:フルタイムで働く方及び、週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の方(正社員か否かは問いません)

※2:週所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上見込み、学生ではない、厚生年金保険の被保険者数が101人以上(2024年10月からは、51人以上)の企業で働いている

<社会保険の加入対象になる方>

厚生年金保険の被保険者数が101人以上(2024年10月からは、51人以上)の企業で働く、以下のすべてを満たす人が対象になります。

・週の所定労働時間が20時間以上

・月額賃金が8.8万円以上

・2か月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)

・学生ではない

派遣社員も正社員と同様に、要件に該当すれば、仕事の契約期間中は適用されます。

そして、仕事の契約期間が満了になると派遣会社との雇用関係も解消されるため、原則として、被保険者の資格が失われます。ですが、いったん派遣期間が満了し、次の仕事につくまで間が空いてしまう場合でも、条件次第で引き続き被保険者でいることもできる制度もあります。

雇用保険の適用には、概ね3日以上の雇用が見込まれていて、1週間の所定労働時間が20時間以上という条件があります。

労災保険についても、派遣会社は必ず適用し、保険料の全額を負担することが定められています。たとえ仕事を始めて1日目だったとしても、勤務中や通勤途中に事故に遭った場合、補償を受けられます。

以上、少々細かい話になりましたが、派遣社員もある程度まとまった期間、継続して仕事をするという前提があれば、社会保険のすべてが適用されます。

有休・産休・育休もちゃんと認められる

次に休暇について。「派遣社員は、休みを取ったら欠勤扱いになって、その分収入が減っちゃうんでしょ」と思っているあなた。それは違います。有給休暇も取得できます。

急な当日欠勤や後付け申請などでは、有給休暇と認められない場合もありますが、あらかじめ派遣会社に相談し、申請するなどの手続きを踏んでいれば、有給休暇はちゃんと認められます。

ただしそれには、同一の派遣会社から6ヶ月以上継続して勤務していること、労働日の8割以上出勤していることという条件がありますので、注意してください。

また、有給休暇取得の手続きに関しては、派遣会社によっても異なりますので、必ず事前に確認しておくことが大切です。

産前産後休暇、育児休暇の取得ももちろん、各種の法律によって派遣社員にも認められています。

正社員同様、派遣社員の中にも、出産・育児を経て仕事に復帰し、ワーキングマザーとして仕事を続ける人が増えています。

なお、介護休暇に関してもやはり正社員同様、派遣社員の場合も男女どちらにも認められています。

クレジットカードの発行や、ローンを組むこともできる

それから、派遣社員でもクレジットカードを作れるのか、あるいは住宅や車を購入する際にローンを組めるのか、ということです。もちろん、どちらも可能です。

ただし、クレジットカード会社やローン会社によって、それぞれ審査基準が設けられていますので、その基準次第です。勤続年数や年収などを基に審査されますが、派遣社員であるという理由だけで断られることはありません。

あくまでもその人本人がどんな働きかたをしてきたのかを見られますので、一定以上の期間、きちんと継続して仕事をし、一定以上の収入があることが認められれば、クレジットカードも作れますし、ローンも組めます。

その点は、正社員であっても同じことです。

ここまでいろいろご説明してきましたが、いかがですか。

「正社員なら当然できることが、派遣社員だからできない」ということはほとんどないと思って間違いありません。もしそういうイメージがあるとしたら、そのイメージは、誰かのまったくの思い込みによって作られてしまっただけのことです。

POINT

・派遣社員も、正社員同様に社会保険は適用される。

・派遣社員も有休・産休・育休の取得は法律で認められている。

・派遣もクレジットカードの発行・ローンを組むことができる。