子どものきもちが最優先
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保育園では、保育者がただ子どものお世話や見守りをしているだけではなく、子ども一人ひとりの育ちに応じた計画を立て、日々の保育を展開すべきです。

年単位で立てる年間指導計画、月単位で立てる月間指導計画、さらに1週間や1日といった短期で立てる計画が必要です。

これらの指導計画では、保育園生活の中で子どもたちに体験させてあげたいことや、その体験を通じて育みたい力、そのために保育者側が用意するものなどを具体的に書面にまとめていきます。

ですが、子どもたちの集団生活なので、当然計画通りにいかないこともしばしば生じます。そうした時に、子どもたちの興味や様子、園児同士の関わり、天候といった変化に応じて、どこまで柔軟に予定を変更したり、別の案に切り替えたりできるかが重要になります。

そこで一番大切にすべき基準が、「子どものきもち」です。指導計画とは、あくまでも計画でしかないのですが、大人数で動く集団での一斉保育に気が向きすぎると、時間通りに・予定通りに進めないと「保育が回らない」という焦りが出てきてしまいます。

ただ、計画は計画通りにはいかないことを前提にします。予定していた流れが変わってしまったなら、当初の計画に固執せずに、「Aくんにとってどうだろう?」「Bちゃんにはこの方が良いかも」と、子どものその時々のきもちを優先して、随時保育の軌道修正を行います。

たとえば、「9時10分に保育園を出発し、9時20分に第一公園に到着する」という予定があるとします。

お散歩では、お友だちや保育者と手をつないで進みますが、1歳・2歳の子どもたちは「誰々とつなぎたい」「◯◯先生とじゃなきゃイヤ!」「お散歩カート(避難車)に乗りたい」といった、その日の気分やこだわりを見せることがあります。

そのような時は、じっくり子どもたちのきもちによりそって、納得できるまで出発しません。「さあ行こう!」となった時には、すでに予定時刻を過ぎていた、なんてことも起こります。「本当だったら今ごろ、公園で虫を探したり、新しい発見が得られたのに(今日はその体験機会を失ってしまった)」なんてふうには考えません。

それよりも、その時その時に「自分のきもちをていねいに尊重してもらえた」という、子どもの心の中で感じとるものの方が、はるかに重要です。そういった体験の積み重ねから、自己肯定感は育まれていくのです。

みんなで一緒にたのしむ活動も、あくまでも子どものきもちを尊重します。みんながたのしんでいるそばで、「興味はあるけど、まだ自分は輪に入る気にならない」といった様子の子もいます。

ある子は絵本コーナーで、保育者と二人きりで絵本をたのしんでいたりします。参加しようとしない子を無理に参加させようとはせず、一人ひとりの、その時その時の子どものきもちによりそい、自発的に「やりたい」と本人が思うタイミングを見守ります。

子ども主体で、自主性を大切にした保育というと、「やりたいことを好きなようにやらせているだけ」という印象をもたれる方もいますが、けっしてそうではありません。

子どもは自らの意思や主体性をベースに、興味関心をもったことに向かうことで、さまざまなことを発見したり、自分で考えたり、学びを重ねていきます。

保育者はその時の様子を観察・記録し、振り返り、次の計画に生かしています。大人にやらされて獲得するよりも、はるかに意味があるのです。子どもになにをやらせるかという視点で保育の計画を立てるのではなく、子どもの「やりたい」を引き出し、個別に一人ひとりのきもちやペースを尊重するのが、3歳までの小さな子どもたちには最も望ましいことなのです。

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